新たな抗インフルエンザ薬の
ゾフルーザ
(一般名バロキサビル マルボキシル)。
★1回の内服でOK✨
★アミノ酸変異株の出現💦
★臨床的な有効性はタミフル(一般名オセルタミビル)と同等
★作用機序は、従来薬のノイラミニダーゼ阻害薬とは異なり、キャップ依存性エンドヌクレアーゼというウイルスの増殖に必要な酵素の働きを阻害することによりウイルスの増殖を阻止する。
以下表はゾフルーザのプロフィール
表1.
ゾフルーザのインフルエンザ治療の位置付けはまだ決まっていないようです。
ゾフルーザの治療により、
ゾフルーザへ低い感受性を示す
変異したウイルスが発生することが報告されています。
これによるゾフルーザの効果や感染性が不明なため、インフルエンザ治療の位置付けがまだ、されていないようです。
[ゾフルーザの特徴]
❶プラセボより罹病期間が有意に短い
【第3相試験】
(T0831。対象は12歳以上65歳未満)
●罹病期間の比較では、
ゾフルーザ群が53.7時間、
プラセボ群が80.2時間と、
▶︎ゾフルーザ群が有意に短かった
※12〜64歳
❷タミフルとの効果は同等
●成人(20歳以上65歳未満)を対象に
タミフル群との罹病期間の比較では、
ゾフルーザ群(53.5時間)と
タミフル群(53.8時間)の間に
有意差はなかった
副作用はタミフルより有意に少ない
❸小児も成人も現時点では、問題となる副作用の報告はない
●成人(12歳以上の小児を含む)の臨床試験
副作用は5.4%(49/910例)に認めた。
下痢と
肝機能マーカーであるALTの上昇
が主なものだった。
●12歳未満の小児を対象とした臨床試験
3.8%に副作用が認められた。
❹有害事象の発現頻度はタミフルより少ない
●第3相試験(12歳以上65歳未満)
有害事象の発現頻度は、
タミフル群(8.4%)
ゾフルーザ群(4.4%)
プラセボ群(3.9%)
→タミフルがより高い
❺抗ウイルス作用は有意に高く、ウイルス量の減少速度は速い
●感染性ウイルス量の減少速度は、
ゾフルーザ群が
投与開始から1日後の
感染性ウイルス減少量は、
・ゾフルーザ群が4.8 log10TCID50/mL
・タミフル群では2.8 log10 TCID50/mL
・プラセボ群では1.3 log10 TCID50/mL
❻家庭内感染の抑制
●抗ウイルス作用の高い
ラピアクタ(ペラミビル)による治療群の方が
タミフル群よりも
家庭内感染が抑えられていた
●同様に抗ウイルス作用の高い
ゾフルーザでも、家族内感染の機会を減らせるはず。
❼小児でのアミノ酸変異株💦
●アミノ酸変異株とは
インフルエンザウイルスの複製を担う蛋白質(RNAポリメラーゼ)は、
PA、PB1、PB2の3つのサブユニットから構成されますが、
そのうちPAの遺伝子の38番目のアミノ酸イソロイシン(I)がトレオニン(T)に置き換わっていた(フェニルアラニン[F]やメチオニン[M]への置換も見つかっている)ものになります。
PAには
ゾフルーザが作用する
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性がありますが、
この変異ウイルスが出現したことで、
インフルエンザウイルスのゾフルーザに対する感受性は約50倍低下していました。
●治療後にアミノ酸変異のあるウイルスが高率に検出されています。
●小児を対象とした国内第3相試験では、
[対象]ゾフルーザ投与患者
[結果]投与前後に塩基配列の解析が可能な患者77例のうち18例(23.3%)で、
アミノ酸変異株が検出されている。
※全てA型インフルエンザの患者でした。
[対象]成人と12歳以上の小児での臨床試験
[結果]370例中36例(9.7%)で、変異株が検出。
アミノ酸変異の有無別に見た有効性の概要は、表2の通り。
[対象]12歳以上65歳未満の患者
[方法]臨床試験(T0831)
[結果]・罹病期間(中央値)は、
▶︎変異なし群(419例)が52.4時間
▶︎変異あり群(36例)が63.1時間と延長
▶︎プラセボ群(80.2時間)
[対象]6カ月以上12歳未満の患者
[方法]臨床試験(T0822)
[結果]罹病期間(中央値)は、
▶︎変異なし群(86例)が43.0時間
▶︎変異あり群(17例)が79.6時間と延長
ウイルス感染力価の再上昇を認めた時期に相当する、投与から5日目または6日目以降の
「症状なし」と「発熱なし」の症例の割合は、変異の有無別で大きな差を認めていない。
表2.アミノ酸変異の有無別に見た有効性
図1 アミノ酸変異の有無別に見たウイルス力価の推移
以上を踏まえて、
これからのインフルエンザシーズンに向けて準備していこうと思います。