マシュマロの薬剤師日誌

病院で薬剤師やってます

肥満外科治療が日本でも進んできてます!

 

肥満手術は、

→手術の前に比べて、手術後で30%程度の大幅な体重減少だけでなく、

 糖尿病の病状を良くする可能性があるため、

 代謝性疾患の外科治療としても注目されています。

 

厚生労働省が最近行った調査によると、

高度な肥満(BMI 35以上)状態にある糖尿病患者は多いことが分かっている。

 

同じ調査では、高度な肥満状態の糖尿病患者に対する

 →肥満手術の検討率は11.1%。

 →実施率(紹介を含む)3.4%(検討率の割には少な目)

 

●肥満手術とは、

 →胃や小腸に外科的処置を施して、食事量や栄養吸収の抑えることで

  ★大幅な体重減少

  ★合併する糖尿病など代謝性疾患を改善しよう

   という治療法です。

 →BMIで30~35以上の高度肥満者が対象となります。

 →現在はほとんどが、腹腔鏡下手術です。

 →世界で最も多く行われている上部消化管手術が肥満手術です。

 →胃がんの多い日本人に適した術式もあります。

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 上図:代表的な肥満手術の術式です。

 ★現在は全て腹腔鏡下手術が基本。

 ★日本ではスリーブ状胃切除術が最も多く行われています。

 ★腹腔鏡下に行われるルーワイ(Roux-en-Y)胃バイパス術が、

  現在でもゴールドスタンダートとされています。

  ①胃上部小弯側に内容積20~30mLの胃嚢を形成、

  ②そこに切離した空腸の肛門側を吻合します。

  ③十二指腸に分泌される消化液を取り込むため、

   切離した空腸の口側を、下部空腸にY吻合します。

  ※減量効果が高く欧米では主流の手技ですが、

   残った胃の内視鏡検査が難しくなるため、

   胃癌が問題となる日本では件数は少ないようです。

 ★胃バイパス術に代わり、普及してきたのが、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術です。

  ①胃の大弯側を切離し、小弯側を筒(スリーブ)状に残します。

  ※減量効果は胃バイパス術より若干劣りますが、安全性と費用では優れています。

  ※残った胃の内視鏡検査も可能です。

  ※現在、腹腔鏡下肥満手術では日本で保険が適用される唯一の術式です。

 ★腹腔鏡下スリーブバイパス術は日本初の術式です。

  ※スリーブ状胃切除術と胃バイパス術を組み合わせたものです。

  ①バイパスの方法は、小腸を十二指腸と空腸の2カ所で切離し、

  ②十二指腸口側と空腸肛門側を吻合、

  ③十二指腸肛門側は閉鎖して、

  ④消化液が流入する空腸口側は下部空腸にY吻合する。

  ※残った胃の内視鏡検査が可能です。

  ※胃バイパス術と同等の減量効果が期待できます。

  ※肥満が高度だったり糖尿病を合併した症例などが、良い適応です。

 ★腹腔鏡下調節性胃バンディング術は、

  ①胃噴門部周囲に専用のバンドを巻いて食事量を抑制しようというものです。

  ※バンドの締め方は体外からの調節が可能です。

   (臓器を切離しないで済み、手術の難易度も他に比べ低い。)

  ※減量効果は他の手術に比べ軽度で、遠隔期の再手術の問題もあります💦

   (世界的に施行件数が減っているようです。)

  ※長期的な減量効果に加え糖尿病の寛解も可能です。

 

★日本の腹腔鏡下肥満手術の長期成績の一例

 →2005~2015年に全国の9施設で行われた831例を対象に

  手術5年後の体重減少率は、

  ①スリーブバイパス術32%、

  ②胃バイパス術29%、

  ③スリーブ状胃切除術26%などと良好でした。

★安全性は、30日以内の早期合併症9%、晩期合併症7%、死亡は831例中1例。

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