硝子体内注射時にルーチンの抗菌薬点眼は必要かどうかについて
ポリープ状脈絡膜血管腫症
(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV、滲出型加齢黄斑変性の一亜型)では、
定期的に
血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)阻害薬の
硝子体内注射を投与します。
◎VEGF阻害薬の硝子体内注射は、
滲出型加齢黄斑変性の標準的な治療法です。
◎硝子体内注射後の重篤な合併症として
細菌性眼内炎があるため、
多くの眼科専門医は、
注射前後に点眼抗菌薬をルーチンに処方しますが
抗菌薬の点眼が眼内炎の発生率を下げるという十分なエビデンスはありません。
◎不要な抗菌薬の点眼が耐性菌を生み出すリスクもあり、薬剤耐性の観点からも安易な抗菌薬の投与はすべきでないとされています。
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<推奨>
硝子体内注射の前後にルーチンで抗菌薬を投与しない(米国眼科学会)
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◎VEGF阻害薬
(商品名アイリーア、ルセンティスなど)の
添付文書と
日本眼科学会の
「黄斑疾患に対する硝子体内注射ガイドライン」では、
術前3日間、および術後2~3日まで、
広域抗菌薬の点眼が推奨されている。が!
「欧米のガイドラインでは、周術期における広域抗菌薬の常用については十分なエビデンスが存在しないとされている」
とも書かれており、
施設・施術者が責任を負うものとされている。
◎眼内炎の発現率は0~2.0%
◎無菌法(医療器具の滅菌、術者の清潔操作など)に加えて、
◎眼表面をポビドンヨードで洗浄、消毒することが、硝子体内注射後の眼内炎の発生率にはるかに大きな影響を及ぼす可能性があるとして、ヨウ素系消毒液を用いた消毒が行われている。
◎眼表面細菌叢は、術後眼内炎の原因となることもあるが、
結膜炎菌は、注射後の抗菌薬として
一般的に使用される第4世代のフルオロキノロンに感受性があるわけではない。△
◎眼内炎の起炎菌は、
口腔内常在菌であることが多く、
硝子体内注射の際に持ち込まれる可能性あり
◎対策としては、
患者および術者の
マスク着用または不要な会話をしないことが
推奨される。😷◎
◎ブドウ球菌による
細菌性涙嚢炎や、急性結膜炎の疑いがある場合など、
抗菌薬が必要なパターンもあります。