リンチ症候群は,
大腸癌症例の2~3%を占める
常染色体優性遺伝疾患である。
症状,初期診断,および治療は
他の形態の大腸癌と同様である。
リンチ症候群は病歴から疑われ,
遺伝子検査により確定される。
患者はまた他の悪性腫瘍,特に子宮内膜癌および卵巣癌のサーベイランスを必要とする。
リンチ症候群は
より若年(40代半ば)で発生し,
その病変は脾弯曲部より口側にある可能性が高い。
大腸以外にも多数の病変が生じる。
良性の病変として,
カフェオレ斑や皮脂腺腫瘍がみられる。
悪性度の低い皮膚癌である
ケラトアカントーマが生じることもある。
その他に合併頻度の高い悪性腫瘍としては,
子宮内膜腫瘍や卵巣腫瘍などがある
(70歳までのリスクは,子宮内膜腫瘍で39%,卵巣腫瘍で9%)。
さらに胃,尿路,膵臓,胆道系,小腸,および脳など他の癌のリスクもが高まる。
最も頻用されるリンチ症候群の治療法は,
指標病変(index lesion)の切除と
他の結腸癌および他臓器の合併腫瘍に対する
頻繁なサーベイランスである。
リンチ症候群の腫瘍の大半は
脾弯曲部より口側に発生するため,
直腸S状結腸を温存する
結腸亜全摘術が代替治療として提唱されている。
第1度近親者は,
大腸内視鏡検査を
20歳代から1~2年毎に行うべきであり,
40歳以降は年1回とし,
女性では,
子宮内膜癌および卵巣癌の検査も
年1回行うべきである。
血縁的により遠い近親者は
遺伝子検査を受けるべきである。