マシュマロの薬剤師日誌

病院で薬剤師やってます

製薬会社さんから医療従事者へのお弁当について

 

厚生労働省が作成した

「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドラインの運用が2019年4月から始まりました。

 

製薬企業や医薬品卸業者が行うプロモーション活動に関するガイドラインで、

委託先・提携先も含まれます。

 

医療従事者一般市民向けの疾患啓発にも適用され、規制はMRやMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)を含む、製薬会社の全ての従業員に及びます。

 

 これに先立って、日本製薬工業協会(製薬協)「製薬協コード・オブ・プラクティス」(「医療用医薬品プロモーション・コード」を含む)という行動指針を2018年11月に改訂し、会員企業の情報提供活動を規定しています。

 

2019年1月からは国際製薬団体連合会(IFPMA)の新たなコード・オブ・プラクティスが運用されており、製薬協の行動指針も基本的にはこれに沿ったものです。

 

これらのガイドライン

「MRさんの医師に対する営業活動」を規定するものになります。

 

厚労省は数年前から、製薬企業のプロモーション活動の実態把握や監視のため、特定の医療機関の医師や薬剤師を「覆面調査員」に任命し、情報提供に不適切なところがなかったか報告させています。

 

一方で、製薬会社も自社のMRさんなどの営業活動を抜き打ちチェックしているようです。

 

ボールペンは「筆記用具」ならOK


 これらのガイドラインで何が規制されるのでしょうか。

 まず、いわゆるノベルティ」の提供が禁止されました。解釈の仕方によってはボールペンもダメなのですが、まだギリギリ1色ボールペンが入っていることが多い気がします。これはノベルティというよりも説明会で話された内容をメモするための「必要最低限の筆記用具」という認識だそうです。このボールペン、企業名は入っていいけど製品名はアウトです。また、カレンダーやスケジュール帳などのギフトもNGです

OTC医薬品の場合は、廉価なものであればOKです)。

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 このほかにも情報提供のルールとして、

●比較研究の結果を伝える際は試験の設計などを明示すること。

●有効性・安全性に関するネガティブな情報も提供すること

●未承認薬適応外処方に関しては医療従事者から要求されないと言及してはいけないことなど細かく定められています。

 

 製薬会社が提供する「弁当」について(ネットスラングでは「COI弁当」と呼ばれています)。

 

医療従事者が製薬会社の弁当を食べる状況については、2パターン想定されます。

 

(1)院内の説明会でMRさんの説明を聞きながら弁当を食べる行為
(2)製薬会社がスポンサーになっている学会のランチョンセミナーで弁当を食べる行為

 

 医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(メーカー公取協)は、説明会における弁当や茶菓について、

(1)開催時間中に、

(2)集まった医療関係者に限って、

(3)お弁当は食事時間帯の場合のみ

──提供できると定めています。

 

このようなルールが作られた背景

●参加予定人数を大幅に上回る弁当を届けていたり

●説明会に参加していない人にも弁当を提供しているなど、

 

過去のMRさんの不適切な行動があります。

 

ただ、弁当を用意しないと説明会に医療従事者が集まってこないのも事実!

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ルールに則っていれば

「弁当を用いた宣伝」OKです。

 

 製薬会社によっては、年間の説明会費(弁当代金など)が2桁億円になることもあるそうです。

 

これは営業活動費として計上されます。

 

(しかし、顔見知りだからといって説明会を聞いてない医師にも弁当を渡したりしたら、それは交際費です。)

 

 

今のルールでは、

ドクターたちにその説明会の部屋の中で時間内に食べてもらう必要があります。

余ったお弁当をドクターが持って帰ってはいけません

 

余った弁当は、

原則、製薬会社が処分します。

 

 

製薬会社の弁当は中身が豪勢なことが多いですが、

一応、上限は厳しくなっているようで、

大体2000円以内が主流のようです。

 

雑誌のJAMAからは

「製薬会社からの弁当によって処方数が増加する」という報告があります

(横断研究なので因果関係は不明です)1)。

 

 

しっかりとルールを守っている製薬会社では、

「説明会をいつ・どこで行い、弁当は○個発注する」と事前に申請し、

説明担当者のパソコンのスライドが

その時間に開かれているかどうかを

オンラインでトラッキングする

システムを作っているところもあります。

 

 

そういう監視体制だけならいいんですが、

厳しい覆面調査員もいるようです。

 

 

噂話で、

勉強会に遅れてきた若手医師が

「ちょっと参加できなかったのですが、お弁当もらってもいいですか?」

とMRさんに言って、

「いいですよ」と答えたところ、

その若手医師が実は覆面調査員で、

会社に報告されてしまったんだとか。

 

 

 メーカー公取協が本来問題にしているのは、あくまで

公正な取引が阻害されていないかどうか」です。

なので、これはちょっとやりすぎです。

 


次にランチョンセミナーにおける製薬会社の弁当を考えてみましょう。

 

製薬会社はプロモーションのために

企業ブースの出展や

ランチョンセミナーの枠を確保する際、

学会に料金を支払います。

 

ランチョンセミナーに関しては、

昔は製薬会社が弁当を用意していたようですが、

今は学会がセミナー枠の売り上げを使って弁当を一括で仕入れているところがほとんどです。

 

 

 5年ほど前、

日本プライマリ・ケア連合学会で行われた

利益相反に関するセッションで、

ランチョンセミナー製薬会社からの

スポンサー料で賄われていることが

利益相反に当たるのではないか

という指摘がありました。

 

その結果、

この学会の全国学術大会では2015年以降、

ランチョンセミナーがなくなったそうです

 

 

税金も投入されている

社会保障費の一部が

薬剤費として製薬会社に流れ、

さらにその一部が販促費になり、

またその一部が弁当になっているということですね。

 

医療従事者がその弁当を食べていていいのかという議論もあるでしょう。